2021/06/30 (WED)

【哀悼】立花隆 元特任教授の訃報に接し、心より哀悼の意を表します

OBJECTIVE.

【哀悼】立花隆 元特任教授の訃報に接し、心より哀悼の意を表します

研究科委員長メッセージ  ~在りし日のお姿を忍び、心からご冥福をお祈り申し上げます

ジャーナリストでノンフィクション作家の立花隆先生が4月30日に逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。

生前、立花隆先生には2007年度から2010年度まで、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授として大変お世話になりました。
先生は「21世紀社会デザインとことばの力」という講義を担当され、大変刺激的な授業を展開してくださいました。また論文指導について話題になった際に、「とにかく徹底的に調べること、分析すること、そして何度も何度も書き直して、推敲を繰り返すことが大事である」ことを伝えるべき、と熱く語る姿が思い出されます。在りし日のお姿を忍び、心からご冥福をお祈り申し上げます。


修了生メッセージ

立花先生を偲び、先生が自主的に開講してくださっていた「立花隆ゼミ」のメンバーで、本学兼任講師の佐野敦子さん、本学特任准教授の三浦建太郎さん、在学時に「ゼミ長」を務められた現中野区議会議員の石坂わたるさんからいただいたお別れのメッセージを掲載いたします。


■佐野敦子さん
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前期課程の立花ゼミの活動は、日本の戦争遺跡の訪問とレポート、そして各自のブログ発信。
アウシュビッツにいったことがあると話したのがきっかけで、私は博士課程1年のときに立教と東大の立花ゼミ生欧州ツアー企画を仰せつかることに。
いま21世紀社会デザイン研究科の教壇に立ち、一見雑駁なこれらのテーマに先生がなぜ取り組んだのか、ようやくわかる気がします。
科学技術の発展の裏にある権力や政治のしがらみ、被害者性ばかりが強調される戦争の記憶の 「歪んだ」継承、インターネットによる自身の情報発信の重要性
それらはいま私の研究の、そして21世紀社会デザイン研究科で議論すべき喫緊の課題になっている気がしてなりません。
いまならもっと深くお話しできたかもしれない、これからどのような社会を目指したらよいか議論できたかも、と思うと残念でなりません。
先生が亡くなってから、知的好奇心の赴くままに行動する先生のそばにいた欧州での1週間は本当に貴重な経験だったのだ、
もっと大切に一言一句逃さないぐらいの気構えで過ごすべきだったと悔やまれます。
月並みの挨拶はお嫌いと思いますが、先生の訃報の接し、自分の未熟さと至らなさに気づき、これしか言葉にできません。
ご冥福をお祈りいたします。

佐野敦子
21世紀社会デザイン研究科博士課程前期課程修了生
21世紀社会デザイン研究科兼任講師(デジタル化と社会デザイン)・東京大学大学院情報学環特任研究員


■三浦建太郎さん
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かつてこの研究科には、立花ゼミという「謎」のゼミがありました。私もまた、その一員でした。
通常の時間割の中に設定された履修科目でありながら、いわゆる講義の形式は一切無し。その中身は学生の自主活動。学生が自ら探求するテーマを選択し、研究してきた内容を発表する。
そうしたスタイルから、いつの間にやら「立花ゼミ」と通称されるようになっていました。
研究科の正規の枠組から外れたようなアングラな雰囲気があり、秘密結社のようなワクワクがあり。そして「知の巨人」と称される立花隆と意見を交わすことができるという、学生にとっては少しミーハーなご褒美があり。
「それ面白いね。どういうこと?もっと詳しく話してよ」
学生の発表を聞いた時の立花先生のお決まりの言葉でした。
「なるほど!だったら早速見に行こうよ。来週時間あるんじゃないかな」
「それなら日本の第一人者の××さんに話聞こうよ。今電話で頼んでみるよ」
そんな唐突な展開に、学生の方が振り回され「これが知の巨人の思考・行動スタイルなのか」と驚かされることも多く。
「知」に迫るためにまず必要なものは「無邪気な好奇心」と「圧倒的なフットワーク」であることを先生の姿を通じて学びました。

最後にお会いしたのはもう何年も前のこと。先生の誕生日パーティでした。
あの時は、立花先生の住居であり事務所でもある通称「猫ビル」にも寄らせていただき、夜遅くまで、左右から迫る蔵書の壁の間で様々お話させていただきました。
また再びお話を伺う機会があると勝手に信じておりましたが、叶いませんでした。

いや。そうか。「死後の世界」。そういえば先生はかなり関心をお持ちでした。今こそ先生は探索されているのでしょうか?
であれば、またいずれお会いできそうです。悲しむことはないのかもしれません。
「三浦くん。待ってたよ。この死後の世界の様子を何とかみんなに伝えたいんだよ。やろうよ。僕はね。この景色を、AR技術とかVRゴーグルとかで、みんな体験できるようにできるんじゃないかと思うんですよ」

—はい。勉強しておきます。

三浦建太郎
21世紀社会デザイン研究科博士課程前期課程修了生
21世紀社会デザイン研究科特任准教授


■石坂わたるさん
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立花ゼミは、ゼミ全体での研究、小グループ単位での研究、各自のブログでそれぞれのテーマの情報発信(ほぼ毎回全員が毎週のゼミ内で発表を行う)等々、毎週のゼミは内容満載の90分でした。
全体やグループでの研究テーマも、ゼミ履修生のブログテーマも様々で、「戦争(国内の戦争遺跡、海外の戦争犯罪、現代の戦争を取り上げた平和教育など)」、「エロス研究(性革命、LGBTとゲイバー、小沢昭一氏の講演、チカン等)」、「ヌーヴェルヴァーグ(映画運動)」、「学食研究」など広範に及び、それぞれの内容に立花先生の視点や興味関心からで緩急様々な質問がされ、ゼミが進行していきます。また、全体の活動はもちろん、各グループのフィールドワークに先生も自ら同行し、戦争遺跡、靖国神社の遊就館・しょうけい館、新宿二丁目のゲイバーなど様々な所に行ったことが思い出されます。(そしてそれと共に、仕事上のスケジュールの制約で、アウシュビッツへの渡航や、戦争の時代を生きてきた先生のお母様への院生による取材の機会にご一緒できなかったことは今でも残念です。)
ゼミ内のテーマはともするとバラバラになりがちな様々なことが展開されているようでいて、先生の読書量や知識の幅広さと、院生の様々な社会的背景や関心事のウイングの広さが、双方の好奇心や探求心によって融合し、WEB上やリアルなゼミの中でどんどん繋がり、更なる広がりや深みを生み出していく……。それが立花ゼミでした。例えばジェノサイドや戦争犯罪と、エロスやLGBTの話が、戦争における性犯罪や粛清の話で繋がっていく———。

現在、時に数の暴力装置やプロパガンダの劇場にもなりうる政治の中に身を置き、ゲイ男性当事者の基礎自治体議員として政治活動をしている私の場合、院生時代に戦争犯罪をどう裁き、どう解決し、どう融和を図るのかを立花ゼミの中で考えたこと。それが、セクシュアルマイノリティとセクシュアルマジョリティの間のユニバーサルデザインやダイバーシティ&インクルージョンを考え、制度を整備し、発信をしていくという中で活きています。
インターネット上で情報発信をするうえで活用できるツールは当時よりもさらに増え、世の中は更に多様化し、性についてオープンに語りやすくなっている半面で、世界のあちこちでそれに逆流する流れも散見される今の状況において、もし立花ゼミが開講されたら、どんなだろうか、先生は何を語り、院生は何を問われるのだろうかと思うにつけ、先生がお亡くなりになられたと言うことが残念でなりません。
立花隆先生、様々なご指導をいただき、ありがとうございました。

石坂わたる
21世紀社会デザイン研究科博士課程前期課程修了生
中野区議会議員(無所属)・LGBT自治体議員連盟世話人(当事者議員)

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