芸術を通して社会との接点を創出していく

ダンサー 有泉汐織さん

2024/01/31

修了生

OVERVIEW

企業にお勤めされながら芸術活動に取り組まれる有泉汐織さんにお話しを伺いました。

社会と芸術の関係
学部生時代は立教大学現代心理学部映像身体学科でダンスの振付理論を学びました。学部在学中も学外の舞台に出演したり、自身の作品を発表したりしていましたが、学部卒業後もダンスの活動を継続するなかで、公的資金を財源に作品が制作・上演されたり、多文化理解や共生といった社会課題との関連で作品を制作することが求められるなど、「社会の中で踊ること」を強く意識させられました。芸術は、社会からどのような期待を寄せられているのか。私はどのようにダンスを社会に提示していくべきなのか。先ず、社会と芸術の関係を知らなければならない、そんな強い危機感を持って、若林朋子特任教授の研究室のドアを叩きました。
研究科では、若林先生のもとで文化政策や芸術文化支援について基礎から学ぶだけでなく、これまで私が考えを巡らす機会もなかったような領域(安全保障、貧困、まちづくり、地域研究(アフリカ)など)で、様々なバックグラウンドと問題意識を持って研究にあたる仲間に出会いました。これらの出会いは、私の中にある「社会」という概念を多様で幅広いものにしてくれました。

研究科での日々を経て見えてきたもの
研究科での授業や論文執筆を通して、私の関心は芸術活動の持続性へと向かいました。研究科在学中は論文執筆だけでなく、持続可能な芸術活動の実践として、支援に依存しないミニマムな手作り公演を企画・実施し、研究と実践(現場)を往還する日々を過ごしました。そして、芸術と社会が多くの接点を持つことで、文化芸術が身近にある社会を創出することができ、ひいては持続可能な芸術活動の実現につながるのではないかと考えるようになりました。
2022年、ダンサーとして出演させていただいた田中大志監督の短編映画「そのこえ」が公開されました。この映画は場面緘黙症という症状をテーマとして取り扱っており、同年3月8日に研究科で上映会「『そのこえ』-場面緘黙(かんもく)症を知り、内なる「こえ」を考える-」を開催していただきました。上映会には学生の方のみならず、当事者の方、支援団体の方など多くの方にご参加いただき、作品を通して、これまで繋がりのなかった方々と接点を持つことができた機会となりました。これからも、活動や仕事を通して、芸術と社会の接点を創出することを積み重ね、持続可能な芸術活動が実現する社会づくりに貢献していけたらと思います。


※記事の内容は取材時点のものです。

プロフィール

PROFILE

有泉汐織さん

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。ダンサー。令和6年4月より静岡県文化財団勤務予定。
2020年3月修了

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